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Shingo Tomoto's MONOSASHI
〜好奇心〜
「歳をとればとるほど、蓄積されるものが増えていくと思うと、一生楽しいに決まってる。」
この言葉が、今回の塔本さんの取材を全て物語っているーーーーーー
今回の取材は、私の尊敬する友人であり、IT企業に て投資を行う塔本真吾さん。学生時代から学ぶことに貪欲な姿が印象的な彼の生き方の根底には、どのような価値観が眠っているのか気になって仕方がなかった。
4月から社会人になってからもその学びへの姿勢は変わらず、会うたびに違う本を持っている彼の、「好奇心」という三文字に収まらない生き様を取材してきました。
Q. 読者の皆様に自己紹介をお願いします!
塔本真吾です。普段は某IT企業の投資事業部で、国内外のファンドとスタートアップに投資をしています。
「多すぎず少なすぎず、ちょうどいい」
Q. MONOSASHIの取材では、ゲストにお気に入りの洋服を着てきてもらうプチコーナーを実施していますが、今日はなぜこの衣装を選んだのですか?
Lagom(ラーゴム)はとても好きな概念です。スウェーデンの単語で、「多すぎず少なすぎず、ちょうどいい」という意味です。だから身につけるものも、良い品質のものを多すぎず少なすぎず、長く使うのが好きです。この時計もLAGOM Watchesというブランドのもの。ロゴも過度に入っておらず、ラーゴムという名前の通り、時計に必要な要素だけが備わっているのでお気に入りです。
Q. Lagom(ラーゴム)、初めて知りました!お洋服に関して、こだわりはありますか?
そうですね。眼鏡をかけずにカジュアルな服を着ると、なぜかホストと間違われることがよくあって、、。なので、着る服の系統をずらしたり、避けるようにしています。最終的に今の服に落ち着いていて、トップスから靴下まで7着ずつ揃えて毎日同じ服装でいます。朝の支度が短くなってギリギリまで寝ていられて便利です(笑)。それから、永田町にギリギリ入れるっていうのは心がけていています。
Q. 永田町にギリギリ入れるコーデ!!?ますます気になります。いつからそのスタイルなのですか?
大学の時に私設秘書をやっていて、その経験から考えた服装です。とくにスラックスは、色々なところに入りやすいボトムスです。素材や形、折り目で雰囲気がフォーマルになるため、スラックスはおすすめです(笑)。
僕は、この先どうなるのかを「逆算」したいんです。
未来予測の精度を上げるのが面白いし、楽しい。
Q. 塔本さんが強く関心をもっていることはなんですか?
政治と経済にずっと興味があります。政治と経済はお互いに影響し合っていて、社会にすごく浸透している。みんなが当たり前のようにお金を使って経済活動をしているし、政治活動もしている。でも、それを真剣に理解しようと向き合う人は少ないと思っています。政治活動も経済活動も毎日世界中で起きていているのに磨りガラスのように良く見えない部分があることがすごく面白いと思うんです。そして、学者には及びませんが政治と経済について知ることは、社会を知ることに近づくと思っています。
Q. 塔本さんには、人間の社会を知りたいという願望があるのでしょうか?それとも個人に対しても好奇心を抱くのですか?
社会について知りたいです。正直、個人に対して好奇心を抱くことは少ないです。周囲の人は具体的に見ますが、それ以外は抽象的に見てしまいます。確かに、プーチンやトランプのように著名な人に対しては「この人は何がしたいんだろう」と調べたくなる。でも、人そのものが気になるというよりも、人の思考の「背景」が気になります。
Q. なぜ、その人そのものよりも、人の思考の「背景」に興味を抱くのですか?
「背景」を知ることで、その人がこれからどんな選択を取るのかが少しだけ予測できるようになります。僕は、この先どうなるのかを「逆算」したいんです。未来予測の精度を上げるのが面白いし、楽しい。でも、一個人ってすごく不安定で、悪く言ってしまうと吹けば飛ぶような存在なので簡単に変化します。それに対して、社会や組織が一変することはかなり難しいので、大きい集団になればなるほど変化が起きづらい。例えば、国や大企業は変化が起きづらいです。変化が起きづらいということは、一定数予想ができるようになるということです。予想がしやすいように、個人ではなく属性のようにできるだけ抽象的な概念で集合として見る意識をもっています。
Q. なるほど。だから、塔本さんの興味分野は経済や政治のような抽象的なものなのですね。今働いてる会社も企業を相手にしていると思いますが、学生時代も経済や政治に関わることをしていたのですか?
そうですね。大学生の時に政治の分野で議員の私設秘書をしていたり、そこからブロックチェーンに興味を持ちITに関する会社をしたり、以前働いていたコンサル会社では企業の戦略と戦術を考えたりしていました。自分も個人ですし、大きな集団を動かせる訳ではないので,少ないリソースで実現するために戦略と戦術が大切だと思っています。
自身で図面を描いてリフォームしたというお気に入りのお家にもお邪魔させてもらいました
失敗から学んで次に活かす
Q. いろんな経験をされていると思うのですが、それぞれの選択では何を重視して選んできたのですか?
失敗から学んで次に活かすことが多いと思います。例えば、自分で会社をしていた時は、人選びに失敗して一緒に仕事をしていたエンジニアに裏切られてしまったんです。自分の選定力不足を感じました。その失敗について補完するために、その後別の仕事を始める時には自分が信用できる人と仕事をする選択をしました。事業内容よりも、自分の会社をやって学んだことを活かせる場所や素敵な人と働ける場所を重視しました。
また、同じ失敗を繰り返さないためにも、エンジニア向けのプログラムに通ったり、研究室に入ったりと、プログラミングに対する最低限の知識も身につけました。
Q. 「失敗」と「その次の経験」が一つずつ対応していて、数珠繋ぎのように続いているのが、塔本さんらしい生き方だと感じました。その数珠繋がりの一番最初は何から始めたのですか?
種まきみたいな時期は、大学1年生の頃でした。いろんなコンテストに参加したり、いろんな場所に足を運んで、いろんな種を蒔きました。様々な選択肢や人に触れることができたため、とても学びの多い時期になりました。
歳をとればとるほど、蓄積されるものが増えていくと思うと、
一生楽しいに決まってる。
Q. 大学一年生で蒔いた種に芽が出て、今、花が咲いているんですか?
花や実の収穫は60年後だと思っています。
Q. 60年後ですか!!!(驚)
僕は歳をとることが楽しみなんです。歳をとっていくことのデメリットは、体力が落ちるとか老けるとかあるけれど、それは生物学上のピークであって、僕は歳をとるごとに、どんどん楽しくなると感じるんです。その理由は、単純に歳をとればとるほど、減るものより増えるものの方が多いと確信しているためです。何かが減少している感覚があると、自分の全盛期みたいなものから遠ざかり、「昔の方が良かった。」と感じると思います。でも、生きている限り、蓄積されるものが増えていくと考えると、生涯は楽しみに満ちています。
Q. このお話しされている塔本さん、めっちゃ笑顔ですね(笑)。
自分は知識や経験、繋がり、教養は、学生時代に身につけられる訳がないと思っています。簡単に身につくものではないため、とてもとても時間が足りない。こんなに素敵なことはありません。
Q. 塔本さんにとってのMONOSASHIとは?
ある物に興味を持って仮説を立てて実行する、という流れを繰り返す時に、根底にあるのは「好奇心」だと思っています。その好奇心が自然に発生していることが、人と機械を分けるものなのではないか思います。好奇心だけは湧き満ちていて、それは小さい頃からこの先もずっと変わらない気がしています。その好奇心を支える土台に、持続可能性のある世界が必要だと確信しています。なので僕は社会を自分なりに予測しながら世界が持続可能で豊かになることに様々な形で投資していきたいと考えています。
Q. このモノサシを大切にするために、普段から意識していることはありますか?
挑戦する友達からの「手伝ってほしい」はできる限り手伝おうとしています。いろんな人といろんなことを一緒にすることって楽しいですし、なにより周りにいる人には豊かになってほしいんです。日頃から勉強するのも、政治や経済で困った人の力になりたいからなのかもしれません。
MONOSASHI編集長 / 松井瞳
interviewer :Hitomi Matsui
editor :Hitomi Matsui , Sawako Hiramatsu
photographer : Yukiho Yamamoto
creative designer : Kohyoh Hayashi
character designer : Rei Kanechiku
location : Oosaki , Tomoto’s house